国際物流KPIマネジメント

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サプライチェーンのKPI

荷主と最終顧客を結ぶサプライチェーン上のサプライヤーには荷主とロジスティクスサプライヤーがいる。荷主の目標は「低価格高品質」の商品を販売し、さらにサービスを提供し、最終顧客満足を創造することである。同様に、ロジスティクスサプライヤの目標もロジスティクスサービスを提供することにより荷主と最終顧客の満足を創造することである。
荷主もロジスティクスサプライヤーも顧客満足を提供するためには、「端から端まで」のサプライチェーンプロセス(マーケティング・受注・調達・生産・販売・物流)を見直し、「品質改善、コスト削減、生産性向上」を実行しなければならない。そのためには、見直しのためのプロセス改善目標(SMART GOAL)を設定し、それらを継続的に改善するための業績改善指標を設定し、定量的な測定が必要となる。この業績改善目標の定量的な測定に必要となる指標のことをKPI(Key Performance Indicators)という。
プロセス改善目標(SMART GOAL)を設定したら、PDCA(Plan-Do-Check-Act)のサイクルを回し、継続的改善を追求するアクションが必要となる。
サプライチェーン上のKPIには、サプライチェーンのプレイヤーである荷主からみたKPIとロジスティクスサプライヤー(キャリア、フォワーダー)のKPIがある。
ここでは荷主とロジスティクスサプライヤーのKPIとは何かを具体的に述べ、それがなぜ必要なのかを解説することにする。

サプライチェーン全体のスループットの改善

KPIの測定はサプライチェーン全体とノードごと(node)/部分の二つに分けて考えられる。
サプライチェーン全体とは、「端から端まで」の荷主とロジスティクスサプライヤーを含む。
ノードごととは荷主の部門間、ロジスティクスサプライヤーの部門間を指す。
KPIはサプライチェーン全体のパフォーマンスを測定するものと、ノードごとの部門のパフォーマンスを測定するものが必要となる。部門のパフォーマンスを改善し、部門間のコラボレーション(Collaboration:協働作業)、コミュニケーションのシステムを強化することによりサプライチェーン全体のパフォーマンスを改善するということが要求される。
つまり、サプライチェーンプロセスが「焼鳥の串」のようにチェーン化され、部分(部門)だけの効率を高めるものでなく、「端から端まで」のプロセス全体の効率を刺激するものでなければならない。プロセス全体の効率の向上は、サプライチェーンの競争力を強化するとともに、会社全体の競争力を刺激するものである。「会社全体の競争力の向上」は、売上、利益の増加、コストの削減に繋がり、「顧客満足」を創造する。これこそ、株主及び顧客が求めている姿である。
サプライチェーン・プロセスを強化し、競争力のあるものにするには、各ノード(サプライヤ)ごとにKPIによるマネジメントを行い、ノードごとのKPIの向上が相乗効果を生み、サプライチェーン全体の「スループット」改善を刺激するようにすることが重要となる。サプライチェーン上にKPIを導入し、品質、コスト、生産性を管理している物流業者・荷主は少ない。しかし、KPIを導入し、サプライチェーンの競争力を強化する時代に突入しているということに「気づく」必要がある。
時代は、「商品と商品」の競争、「価格と価格」の競争から「SCMとSCM」の競争に移り変わっている。社内及び社外のサプライチェーンを強化をしないと生き残れない時代になる。「サプライチェーン」を強化するには、「改善目標」(SMART GOAL)を設定し、それを定量的に数値で管理する「KPIによる管理」が要求される。
品質改善の目標(SMART GOAL)のSMARTとは、Specific(明確な目標)、Measurable(測定可能な目標)、Achievable(達成可能な目標)、Realistic(現実的な目標)、Time-bound(期限管理のある目標)を意味する。SMART GOALの実現度を評価するために数値化したものをKPIという。

Key Performance Indicators

ISO9001品質マネジメントシステムの究極の目的は、「品質」を改善することにより、『顧客満足経営』を展開し、企業の売上を増加し、ムダなコストを削減し、利益を確保・創造することである。品質を改善するためには、品質改善目標、「スマート・ゴール(SMART GOAL)」を設定し、重要な業績評価指標(Key Performance Indicators)に基づいて、品質改善目標達成のための実行計画を作り、計画に基づき実行し、その効果を測定すること
により、さらなる改善処置をとることが要求される。
即ち、Goal(Objective)setting-Plan-Do-Check-Actのサイクルを回し、継続的品質改善を追求するアクションである。
Key Performance Indicators(KPI)とは、品質改善目標(スマート・ゴール)を数値化した指標を指す。KPI設定の対象は、品質改善に関わる全ての領域を含む。経営戦略、財務、顧客満足、従業員満足、株主満足、業務プロセス、マーケティング、営業行動、カスタマーサービス、オペレーション、教育、購買、サプライヤー管理などの領域が含まれる。
ロジスティクス業界におけるKPI(重要な業績指標)とは何か、それをどのように導入し、さらにそれを測定することにより品質改善を実行していくかを述べてみたい。

KPIの数値化

ISOを組織内に導入時の最初のアクションは、認証対象部門の既存の業務プロセスを分析し、プロセス・マップ(業務のフローチャート)を作る作業である。完成した業務プロセスは、既存の流れに沿ったものである。そのプロセスに従って、既存業務を遂行しているのである。次は、既存プロセス(業務活動の流れ)がなぜ必要なのかを明確にする。つまり、既存プロセスが産出する成果物(活動の成果)は何かということである。具体的に言うと、営業のプロセスの「核となる成果物・仕事」は、売上予算達成である。カスタマー・オペレーションの成果物は、HAWB(ハウス・エア・ウエイビル)の作成である。
営業の「既存の活動プロセス」は「売上予算達成」のために必要であるということになる。ISO9001品質マネジメントシステムが求めているのは、「既存の活動プロセス」を改善することによる「売上予算達成」である。「既存の活動プロセス」を改善し、「売上予算達成」ができたならば、「品質」が向上したことになる。つまり、顧客が自社の商品を買ってくれたことの証明であり、顧客が満足する営業戦略であり、営業プロセスであり、営業行動であったと言える。「売上予算」を達成するためには、営業戦略をつくり、目標を設定し、その目標の達成度を測定する指標を設定することが必要となる。これがKPI(Key Performance Indicators),目標に対する効果測定値である。定性的な指標でなく、測定可能な定量的な指標である。国際フォワーダーの営業部における「売上予算達成」のためのKPIを示すと以下のようになる。

営業部門のKPI

① 予算に対する売上達成度(金額と%)

② 既存顧客の売上予算達成度(金額と%)

③ 新規顧客の売上達成度(金額と%)

④ 既存顧客のHAWB開発目標に対する達成度(件数と%)

⑤ 新規顧客のHAWB開発目標に対する達成度(件数と%)

⑥ 既存顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%)

⑦ 新規顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%)

⑧ 顧客数の開発目標に対する達成度(顧客数と%)

⑨ 営業マン一人当りの売上金額、重量、件数の目標に対する達成度(%)

⑩ 営業マン一人当りの顧客開発数の目標に対する達成度(%)

⑪ 1件のHAWB販売に要するセールスマン当りの時間(時間と%)

⑫ 1件のHAWB重量の目標に対する達成度(重量と%)

⑬ 1件のMAWBに対するHAWBの件数(件数と%)

⑭ 1件のMAWBの重量(重量と%)

⑮ 1件のMAWBのフリーキロ(Free Kg)/重量、金額の達成度(%)

⑯ 営業マン一人当りのコスト(人件費と販売費)

⑰ Kg当りの売上、利益、コストの達成度(%)

⑱ Shipment当りの売上、利益、コスト(%)

⑲ セールス・リードの成約率(%)

⑳ 営業マン一人当りの顧客訪問件数と成約率(%)

21 「Door to Door」、「Door to Airport」、「Airport to Door」、「Airport to Airport」のHAWBの売上目標と達成率(HAWBの件数と%)

22 部門の通関件数と営業マン一人当りの件数(件数と%)

23 部門の通関料と営業マン一人当りの通関料(料金と%)

24 部門の集配料及び営業マン一人当りの集配料(料金と%)

25 部門の保管料及び営業マン一人当りの保管料(料金と%)

26 部門の危険品売上高と営業マン一人当りの売上高(金額と%)

上記で解るように営業部門に関するKPIは数多くある。これらのKPIの中で、最も適当なものを選択し、SMART GOAL(品質改善目標)と重要な効果測定指標(KPI)を設定し、目標に対する実績を測定、評価し、改善処置をとり、目標達成に向けて継続的改善をすることがISOが追求する哲学である。

国際物流業界の営業マンの売物はHAWBである。HAWBの裏面約款に基づいて、顧客と契約をする行為が営業マンの役割である。売上目標を達成するには、先ずHAWBの販売件数を増やすことである。次はHAWBの中身を充実させることである。重量は多ければ多いほど収入が増える。さらに、Kg当りのマージン(売値と買値の差)を上げることである。HAWBの販売件数を増やすには、営業マンの1時間当りの生産性、つまり効率販売が要求される。営業行動の変化が必要となる。重量を増やすには大手顧客を開発する必要がある。Kg当りのマージンを上げるには、顧客への販売能力と商品力が要求される。いわゆる、セールスマン・シップと商品開発力である。

HAWBを売るという活動の中には、営業戦略、営業行動の改善が常に存在する。それを実行し、目標を達成することが、営業部門の品質マネジメントシステムである。

【フォワーダーのKPI

『低価格・高品質』の商品を顧客に提供し、『顧客満足』を創造することがフォワーダーの使命であり、ISO品質規格が要求している事項である。低価格・高品質な商品を提供するためには、①製品実現化のプロセスを改善し、スピードのあるものにしなければならない。②顧客のニーズに合わせた多様な商品を開発し、商品の選択ができる環境を作らねばならない。③顧客志向のカスタマーサービスを提供しなければならない。
これらの目標を実現していくためには、品質改善の目標(SMART GOAL)とその目標の実現度を評価する数値目標(KPI)を設定し、それを管理することが要求される。SMART GOALのSMARTとは、Specific(明確な目標)、Measurable(測定可能な目標)、Achievable(達成可能な目標)、Realistic(現実的な目標)、Time-bound(期限管理のある目標)を意味する。SMART GOALの実現度を評価するために数値化したものをKPIという。

 

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ごあいさつ

宇野 修
資格、経歴
  • 財団法人日本規格協会(JRCA)の品質マネジメントシステム、
  • 社団法人産業環境管理協会(CEAR)環境マネジメントシステム
  • 財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)のISMS情報セキュリティマネジメントシステム
  • 英国IRCA労働安全衛生マネジメントシステムの審査員登録者名簿に登録経験有。
  • TAPA(貨物セキュリティマネジメントシステム)内部審査員トレーニング参加証明書(TAPA Asia)

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