物流BCP(事業継続計画)導入支援

BCP(事業継続計画)導入支援サービス

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社長がBCP策定の責任者になる

静岡県の顧客の会議室で「グローバルロジスティクス改善」コンサルティングのミーティングの最中に今まで経験したことのない「長い恐怖の揺れ」を感じた。震度5以上の揺れであった。長い揺れの中で「東海地震が起こったのかな」という恐れを感じた。あまりに長い揺れであったため、「これで死ぬかもしれない」という思いが脳裏を走った。会議は中止となり、ホテルに直行し、満室寸前の部屋を予約し、一泊した。ホテルに泊まれたから幸運であったが、泊まれなかったら、お客様のところで一夜を過ごさなければならなかったかもしれない。翌朝、新幹線で東京に着くと、前日東京で一夜を過ごした人でごった返していた。結局、ギュギュ詰めの電車、バス、電車を乗り継ぎ家にたどり着いた。2時間位で済むところが、8時間以上かけたことになる。これが東日本大震災での私の経験である。
途中で3時間ほどバスを待っている時に感じたことは、災害時における公共機関の対応が誠にお粗末であったということである。そこには緊急時における「目に見える対応プロセス」が全くないということである。いつ電車が動くのか、いつ頃動くのかという情報提供が全くなかったということである。つまり、「災害時対応計画」があまりにもお粗末で、管理不可能な状況が続いたということである。
テレビで東北地方の惨憺たる状況を見た。すべてが破壊され、多くの死者、行方不明者、流された家屋、工場被災、物流機能のマヒ、食糧不足、農業・漁業の再開不能、避難所にいる人々の悲惨な姿、さらに原発事故対応の不手際などをみて、今後の日本をどのように管理すべきかを考えさせられた。筆者はリスクマネジメントの責任者、研修、導入の経験をしてきているが、その中身がまったく曖昧なものであり、再度作り直さなければ、無用の長物で終わってしまうのではないかと思っている。今回のような、地震という自然災害時に復旧のスピードと対応プロセスのマニュアルである「BCP(Business Continuity Planning)事業継続計画」というリスクマネジメントの手法があるが、そのプロセスに従って、行動できた公共機関・企業は全くなかったと言っても過言ではない。その理由は、行政のトップ、企業のトップがBCPの実行プロセスに熟知していなかったことが大きな原因である。その結果、不手際だらけの「見えない復旧プロセス」をマニュアル作業でやらざるを得なかったのが、被害を最小限にとどめることができなかった大きな要因である。民主党が党内抗争に長い時間をかけ何も生まなかったことを考えると、価値を生まない時間に労力を費やしている行政に義憤を覚える。こんな無駄な時間の間に、日本の危機管理対応マニュアル、具体的管理策、すぐに行動できる計画の策定・災害時の特別予算、復興財源の事前の予算化に時間をかけていたほうが、よっぽど国と国民のための価値を生んだことになる。ここで、大きな反省をし、真剣になって、BCP(事業継続計画)を行政活動、経営活動の最重要項目として取り上げ、作り直し、「関係者誰でもが見えるプロセス」を作りあげることが急務であり、それが企業活動、日本経済の復興につながるということを認識し、目覚めることが要求される。

2.BCP(事業継続計画)を作り直す

経営トップは「念のために、万一のために、BCPを作っておいてほしいと総務部・管理部・CSR部・リスク管理室」などに気楽に命令してきたのが、いままでのやり方である。一応作っておくという体裁を整えただけのことである。
BCPを作れといわれても、BCPは簡単には作れないのが現実である。その理由は、「BCPとは何か」、「BCPのマニュアルをどうつくるか」という疑問から入っていかなければならない。事実、BCPのコンセプトを頭の中で整理し、まとめ方を考えるだけで、かなりの時間を要する。最終的には、ホームページ、専門書、リスクコンサルタントなどに頼りながらBCPマニュアルを完成するのが最初のアクションである。BCPが要求しているのは、「リスクの定義、リスクの評価、リスク対策、災害発生前のプロセス、発生時の行動規定と災害発生後の復旧のプロセス」である。これを作るだけで終わっている企業がほとんどである。BCPを作っていない企業も日本ではかなり多いと思う。物流業界も同様である。
筆者もロジスティクス企業のBCPを作りあげてきた。しかし、そのBCPが災害時に(特に今回のような大災害時)ほんとうに復旧作業を効果的・効率的に進められ程磨かれたものであるとは思わない。その理由は、BCPが自然災害の場合、「災害の予測」という不確定な出来事をベースに作られているからである。つまり、「災害が起こってみなければ、実際の対応策なんかわかる筈がない」というやや現実的な視点で見ているからである。普段から、BCPのシュミレーションを繰り返し、継続的に見直し、さらに実用的なBCPにするというプロセスがそこには存在していなかったのが事実である。
添付の図表にBCP(事業継続計画)の進め方(プロセスチャート)を示した。
【事前リスクマネジメントシステム】①危機管理委員会の組織化、②リスク(危険源)の洗出し、③リスクマネジメントの計画策定、④BCPマニュアルの作成、⑤能力・教育・訓練、⑥シュミレーション訓練、⑦BCPの見直し、
【事後リスクマネジメントシステム】①危機管理委員会(CMT)の集合/被災後6時間以内、②CMT会議の開催、③CMTチームの役割確認、④CALL TREE(緊急連絡網)により関係者に連絡、⑤災害状況の分析(修復できるもの・修復できないもの)、⑥保険でカバーできるコストとできないコストの算出、⑦復旧計画の作成と実行(復旧開始ー復旧作業ー復旧終了ー事業開始)、⑧BCPの見直しというプロセスでできている。
これは、BCPの一般的な構成とプロセスを示したものである。
このコンセプトは、自然災害リスク、経営リスク、政治・経済・社会リスク、さらにサプライチェーンリスクなどを対象に作られたものである。このBCPには改善しなければならないいくつかの問題がある。一つ目は、自然災害リスクの想定が、特に地震の場合には震度5弱または震度5強というレベルに基づいて作成されているところである。この想定を見直し、震度6~震度7もシナリオの中に組み入れ、対応策・管理策も万全のものを作る必要がある。二つ目はシュミレーション訓練の頻度を増やし、年3回以上にし、シュミレーションを繰り返すことにより、BCPを磨き、改善し、目に見える実行可能なものにすることである。三つ目は、自然災害が起きた場合には、危機管理委員会(担当者)が即座にすべての関係者(従業員、消防、警察、地方自治体、復旧業者など)とオンライン(携帯・メールなど含む)で、指示を出せる体制を作ることである。これには、国、地方自治体、関連機関との協働作業が必要となる。
四つ目は、避難場所の確保(ホテル、事務所、自宅、その他)を直ぐに伝達できるシステムを作っておくことである。5つ目は、経営リスク、政治・経済・社会リスク、サプライチェーンリスクについても被害の想定を広く・深く設定し、一つ一つのリスクについて管理策・復旧策について全従業員・関係者が熟知している必要がある。
ここで強調したいのは、既存のBCPで救える災害、救えない災害がある。しかし、BCPの本質的な役割・価値は救えない災害の被害を最小限にすることである。
東日本大震災では津波(TUNAMI)にのみ込まれ、多くの犠牲者をだし、さらに東京電力原発被害によりパニック状態に陥ってしまっている。この悲惨な状況をみると、言葉を失うが、想定外の災害であったことは事実である。このような災害時に必要なBCPは「津波警報を待たずに、即座に避難所、高台に避難するという普段からの訓練が必要となる。その訓練を繰り返し、磨きのかかった行動計画(BCP)を作り上げておくことが要求される。

3.BCP策定のヒント

今回の東日本大震災は大津波で壊滅的な被害をもたらしたが、地域別にみると防災意識と防災行動を認識している地域とそうでない地域では明暗を分けた。(ホームページと日経新聞参照)。
石巻市水浜集落は「防災意識の高さ」で98%が生還した。昔から何度も津波を経験してきた
宮城県石巻市雄勝町の水浜集落は、約130戸の集落がほぼ壊滅したが、住民は380人中、死者1人、行方不明者8人で全体の2%程度であった。背景には、地域で受け継がれてきた「知恵や防災意識」の高さがあった。水浜集落は、津波を増幅させるリアス式の雄勝湾の入り口にあたる。昭和8年の昭和三陸津波や、35年のチリ地震津波を経験し、昨年2月のチリ地震でも約70センチの津波が押し寄せた。集落近くの市の支所前には、「地震があったら津波の用心」と刻まれた石碑があった。住民は、長年言い伝えられてきたその言葉を胸に刻んでいる。
 主婦の秋山勝子さん(67)は地震当時、海岸から約30メートル離れた自宅にいたが、夫とともにそのまま飛び出し、高さ二十数メートルの高台を目指した。高台に着いた約15分後、茶色く濁った波が轟(ごう)音(おん)とともに、集落を飲み込んだという。湾を襲った津波は最高約20メートルに達し、約130戸のうち9割以上が流出。だが、住民約380人の大半は波がくるまでに、高台に登り難を逃れた。 地区では毎年、高台に上がる訓練を実施している。地区会長の伊藤博夫さん(70)は「水浜のもんは、高台までの一番近い道を体で覚えている」という。
「貴重品やアルバムはすぐに持ち出せるよう、リュックサックにまとめている」と話す住民もいた。
集落には1人暮らしのお年寄りも多かったが、伊藤さんは「どこの家に誰がいるか、頭に入っている」。自身も独居高齢者を家から連れ出し、背中を押して高台を目指した。
これとは逆に予想もつかない被害に遭遇したのは、地震発生から2時間半後に大津波が襲った千葉県旭市のケースである。被災した人の多くは一時避難しながら、「もう大丈夫」と家や店舗に戻ったところで波にのまれたケースである。さらに、宮古市田老地区では2重の長大な堤防を作ってあったが、高さ10メートルの自慢の堤防(万里の長城と呼ばれる)を乗り越え、高さ20メートル以上の津波が襲い、地区をがれきの山に変えたのである。
このケースでわかるように、全住民への意識の高揚と津波想定を高くし、絶対万全のシステムを構築しなければならないことが理解できる。BCPの策定方法に参考にしてほしい。
BCPのシュミレーションを繰り返し、テニス、ゴルフ、剣道の素振りを体に覚えさせると同じように 
全従業員に訓練を繰り返し、それを見直す作業が肝心である。
 

4.物流業界はどうすべきか

物流業界においても、BCPの中には自然災害リスク、経営リスク、政治・経済・社会リスク、さらにサプライチェーンリスクなどを組み入れないといけない。サプライチェーンリスクの中には、当然のことながらサプライチェーン上の自然災害リスクによるサプライチェーンの切断、地震・洪水などによる倉庫への被害、空港・港の閉鎖、国内・海外取引先の被害などグローバルのプロセスを視野に入れたBCPの作成が要求される。これは簡単には作れない。しかし、つくらなければ顧客をなくし、企業倒産に追い込まれる可能性は十分である。前述したBCPの改善点も考慮し、「端から端まで」のサプライチェーンを守るBCPをつくらなければならない。これは、経営トップが担当者を決めて作らせるような課題ではない。社長がイニシアティブを握り、全従業員総ぐるみで「顧客のため、社会のため、自社を守るため」のBCP作成に取り組んでほしい。
ここで特記すべきことは、災害が起きると代替倉庫・事務所の確保が必要になる。事前に使わない倉庫・事務所を確保しておくことは膨大な費用がかかるから、これは避けなければならない。共同物流と同じように、物流業者同士が協働し、災害時にお互いが助け合えるシステムと組織を作っておく必要がある。関東圏と関西圏の業者は倉庫を災害時に相互に利用できる契約を結んでおくことが重要である。倉庫だけでなく、事務所、従業員の相互利用も視野にいれた協働システムを是非作ってほしい。

5.BCPは経営会議の最優先課題である

ISOの内部監査、第三者監査と同様にBCP担当者が物流企業内にいる。しかし、その監査手法も年に1回、2年に1回ほど担当者がステレオタイプに行っているのが現状である。
「弊社にはCSR部・リスク管理室がありISO,BCPなどを管理する部門がありますから問題ございません」と言っている国際・国内フォワーダーがあるが、現状の組織、活動内容を根本的に変えない限り、目に見える・有事に役立つBCPを作ることはできない。
リスクマネジメント(BCP、ISOなど)を企業の最優先の経営課題にする必要がある。
つまり、組織内であまり目立たない立場にいるISO/BCP担当者に丸投げをしておくのではなく、経営の中にリスクマネジメントを取り入れる必要がある。
企業・社会活動の中には、リスクが蔓延している。人命に影響を与えるリスク、物的な資産に影響を与えるリスク、行動することにより発生するリスク、一方的に外部から与えられるリスクなど様々なリスクが考えられる。サプライチェーンにおけるリスクも同様である。企業活動・社会活動を取巻くリスク(不確実性/危険源/危機)には様々なものがある。
台風、地震、洪水などの自然災害、火災、交通事故、航空機事故、運送中の事故、盗難などの事故、製品リコール、環境汚染責任、労働争議、伝染病、株価変動、顧客情報漏洩、取引先倒産、営業戦略の不備などの経営リスク、戦争、通商問題、景気変動、為替変動などの政治・経済・社会リスク、さらに物流活動の中にあるトラック事故などによる納期遅れ、梱包脆弱貨物による破損事故、危険物の爆発による事故、ロジスティクスプロセスの不備によるコストの垂流しなどのサプライチェーンリスクなど社会・企業を取り巻く環境の中には大分類すると4つのリスク(危険)が存在し、それが巨大化し複雑化している。
これらのリスクを管理し、事業継続が不可能な状況を避け「先ず人命を守り、さらに財務的損失(Financial Loss)を最小限にとどめること」を計画し、それを実行することが企業経営である。
売上・利益が拡大していても、一度大きな事故・災害が起これば、売上・利益どころの
話ではなくなる。企業の存続ができなくなるということを、東日本大震災の悲惨な災害を再度見つめ直し、是非、事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning / Business Contingency Planning)と災害復興計画(DRP:Disaster Recovery Plan)を災害・被害を最小限に留めることができる切れ味のあるものにしてほしい。それには社長が行動しなければ何も始まらない。

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ごあいさつ

宇野 修
資格、経歴
  • 財団法人日本規格協会(JRCA)の品質マネジメントシステム、
  • 社団法人産業環境管理協会(CEAR)環境マネジメントシステム
  • 財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)のISMS情報セキュリティマネジメントシステム
  • 英国IRCA労働安全衛生マネジメントシステムの審査員登録者名簿に登録経験有。
  • TAPA(貨物セキュリティマネジメントシステム)内部審査員トレーニング参加証明書(TAPA Asia)

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